東京のスポーツ整体治療院【神楽坂整体たいむ】

黒猫シシとFIP

【黒猫闘病記】について

私は保護猫出身の黒トラ猫と一緒に暮らしています。
名前は【シシ】まだ子猫の男の子です。

2021年10月10日に念願だった猫さんを迎え入れ、ウキウキと浮かれ気分の毎日でした。
しかし、その日は突然に、そして静かに訪れたのです。

シシを迎えて2ヵ月ほど経ったある日、シシは体調を崩しました。
なかなか症状が改善しないまま時は流れ、紹介先の動物病院でついに病名がわかりました。
シシの病気はFIP(猫伝染性腹膜炎)。
近年まで「死の宣告」と言われてきた猫にとって必死の難病です。

夢に見た猫がいる生活。
そんな生活が始まった矢先に訪れたFIPという病気。
「こんなはずじゃなかった」
何度そう思ったことか。

【黒猫闘病記】は、FIPを発症してしまった我が家の愛猫【シシ】の様子と、この病気に対して私たちが何を考え、どういう選択をして、実際に何をしてきたのかを綴っています。
なるべく正確な内容にしたいとは思いますが、私の記憶している範囲でしか書くことができないため、情報不足や間違えた内容もあると思います。
また、関係者さんに配慮して伏せている情報もあります。
そのあたりのことはご理解いただけると幸いです。
ただ、それらを差し引いても「この経験には公開する意義がある」と思っています。
愛猫がFIPを発症してしまった…という人はもちろん、猫好きさんや動物好きな人たちにとって何かヒントとなるようなものが書けていたら嬉しく思います。

お迎え初日のシシ
お迎えしたばかりの元気なシシ
FIPを発症して弱っているシシ
FIPのため、こんなにガリガリに。。

保護猫【シシ】との出会い

まず始めに、私たちがどのようにしてシシと出会ったのか書いておきましょう。
他人の事情に興味はない…という方は飛ばして先をご覧ください。

まず、なぜそもそも「猫を飼おう」となったのかということから話します。
実は私たちは子供の頃に実家で猫を飼っていました。
その時の思い出もあって、ともに猫好きだったため「猫を飼おう」と決めたのはもう10年以上も前のことです。
しかし、いかんせん東京は生活費が高いのです。
その最たるものが家賃です。
しかも、ただでさえ高い家賃はペット可物件となると更に高額になります。
さらに、敷金も償却されるので戻ってきません。
このような状況のため、私たちにとって最高の贅沢が「猫を飼う」ことでした。

そんな私たちにとって「悲願」ともいえる物件に出会ったのが2020年の11月です。
既に年齢も40歳をこえてしまいました。
「ここで引っ越さなかったら次のチャンスはいつになるかわからない」
と、少々背伸びをして引越しを決意しました。
そして、無事に契約が終わり、引っ越したのが2020年12月末のことです。

「さぁ、いよいよ猫を飼うぞ!」
と意気込んだものの、実際にシシを迎えたのは10月10日と10ヵ月以上も経ってからでした。
理由は2つあります。
1つは新型コロナウィルスの流行によって収入が減り、生活の維持で精一杯になってしまったこと、もう1つは、命を預かることへの不安・責任から腰が引けてしまっていたことです。
収入についてはある意味仕方がありません。
私にはその時の状況で自分自身にできることを実直に行うことしかできないので、感染対策を順守しながら頼ってくれる患者さんのためにベストを尽くします。
それしかありません。
命の重さについては、自分自身を納得させることができないと前に進むことができません。
人間、やらないための理由を探させたら凄いものです。
あれもこれもと湯水の如く湧いてきます。
ずっと「飼いたい飼いたい」とは言ってきたものの、いざ「飼える」となるとそのプレッシャーは大きかったです。

そんなある日、当院の患者さんから「保護猫を迎えた」というお話を伺いました。
お話を伺っていて「やっぱりいいなぁ」と羨ましく思ったのを覚えています。
「ウチでも猫を飼いたくて、ペット可の物件に引っ越したところなんです」
と伝えたところ、その方が保護猫ちゃんをお迎えする時に役に立ったというサイトを教えてくれました。
私がそのサイトを見るようになったのは言うまでもありません。
そして、いろいろな猫さんの写真や生い立ちを見て、少しずつ気持ちが前を向き始めたのを感じました。

そんなある日、プロフィールの写真で一目惚れしたのがシシです。
早速保護主さんに問い合わせをし、とんとん拍子でトライアルが決まりました。
とんとんと運びすぎてお迎えの準備を整える時間がなく、大慌てで必要な物を注文したり買いに走ったりしました。
「あーでもない、こーでもない」
「あれがいい、これはイヤだ」
など意見の違いは当然ありましたが、今から思うと楽しい時間でした。

そして、2021年10月10日、トライアル初日。
私たちは運命の日を迎えることになりました。
里親サイトに掲載されていたシシ(1)
里親サイトに掲載されていたシシ(2)
保護主さんが撮ったお迎え初日のシシ

シシの自己紹介

魔女の宅急便【ジジ】僕の名前は【シシ】。
シシはカタカナでシシだよ。
ひらがなじゃないから間違えないでね。
ご主人から聞いた僕の名前の由来は、魔女の宅急便の【ジジ】っていう黒猫なんだって。
でも、僕はお腹が白いから「濁点取っちゃおうか」ということで【シシ】になったんだって。
意味はよくわからないけど、ジジよりシシの方がなんかスッとしているよね!
だから僕は気に入ってます♪

名前の由来でも言ったけど、僕は黒猫なのに胸からお腹が白いんだ。
そして、そこに黒毛のシマが入ったトラ柄。
ちょっとオシャレでしょ?^^
背中の黒毛も表面だけで、中の方は白いんだよ。
だから、分け目を作ったりすると白毛が見えてホワホワしてるんだ♪
ご主人は「たんぽぽの綿毛みたい」と言って、毛を逆立てて白毛を出すのが好きみたい(笑)
僕は大人の余裕がある猫だから、それくらいじゃ怒らないんだ^^

いろいろなシシ

僕の生い立ちだけど、実は僕、生まれてすぐにお母さんに捨てられちゃったみたいなんだ。
それで風邪をひいちゃって、泣いているところを保護主さんに保護してもらえたの。
運がいいよね♪
けどね、4兄弟のうち2匹はもういないの。
保護主さんは「虹の橋?」っていう橋を渡ったんだって言ってた。
その橋を渡ると、温かくて穏やかな日々が待っているんだって。
お腹が空くこともないって言ってたけど、僕、お腹は空いてほしいな。
だって、ご飯はやっぱりお腹が空いている時に食べるのが一番美味しいもんね♪

そういえば、僕も風邪がちゃんと治ってないみたいで、すぐに体調を崩しちゃうんだ。。
ご主人の所に来た翌日も熱を出しちゃって、病院に連れて行ってもらったし。
いきなり迷惑かけちゃった。。
けど、イヤな顔ひとつしないで一生懸命お世話をしてくれるご主人のこと、僕は大好きなんだ♪
不束者のシシだけど、これからもどうぞよろしくお願いします!

初日のシシ

FIP(猫伝染性腹膜炎)とは

シシが発症してしまった病気はFIP(猫伝染性腹膜炎)といいます。
これは1歳未満の幼猫さんに発症し、数年前までは【死の宣告】と言われた難病です。
幸いなことに、今ではアメリカの製薬会社が開発したお薬のお陰で治せる病気になってきましたが、治療に使うお薬が未認可ということもあって治療を施してくれる獣医さんが少ないのが現状です。

症状は食欲の減退と運動強度の低下から始まると言われています。
日に日に食べなくなっていき、同時にあまり遊ばなくなっていく…という感じです。
発熱も診られますが、抗生剤などを投与しても下がりません。
(シシは一時的に下がりましたが、翌日にはまたしっかり発熱していました)
そのうちに黄疸や貧血で舌から赤みがなくなっているのに気がつきます。
そして、FIPは腹膜炎なので腹水が溜まるケースが多く、これが診断の決め手になるようです。
おおよそこの辺りがFIPの特徴的な症状でしょうか。

ちなみに、シシはFIPウェットタイプ【胸水型】でした。
(ウェットタイプは腹水や胸水などの浸出液が診られるFIPです)
胸水型なので、腹水ではなく胸水が溜まります。
そして、その胸水に肺が圧迫されて呼吸が苦しくなっていくのですが、これが本当に見ているだけでツライのです。

こんなFIP(猫伝染性腹膜炎)ですが、今では特効薬があります。
特効薬というだけあって、その効果は絶大です。
シシもお薬を投与し始めてから1週間程度で死の気配がなくなり、見ていて安心できるくらい落ち着きました。
本当に凄いものです。
しかし、このお薬は未認可ということもあってとても高いです。
しかも、84日間(12週間)の連続投与が必要とされ、検査や治療中に必要となった対症療法の治療費と合わせると…ちょっと現実逃避したくなる金額になります。
そのため、治療に踏み切ることが難しい…という理由で多くのケースでは未だに死の宣告と同義の難病だろうと思います。
私たちが治療を受けることができたのも、いくつもの偶然が重なった結果でしかありません。

FIPのお薬

最後にFIPの原因ですが、これは【猫コロナウィルス】が体内で突然変異することで発症します。
しかも、この猫コロナウィルス自体は多くの猫さんが保有している一般的な風邪のウィルスの1つです。
そのため、これを未然に防ぐことは事実上不可能とされています。
また、ウィルスが突然変異を起こす理由についてもまだよくわかっていないようです。
一応「ストレス説」があるにはあるのですが、正直「ストレス」と言われてしまったら対処のしようがないです。
腹水が溜まった猫さん(参考画像)
耳の黄疸(参考画像)
白目の黄疸(参考画像)

FIPの宣告を受けて

獣医さんからシシが「FIPの可能性が高い」と告げられたのは12月9日のことでした。
そして、治療を開始したのが12月13日です。
今になって振り返るとたったの4日だったんですね。
当時の私にはもっと長い時間に感じていました。
それくらい、この4日間はいろいろなことがありました。
それらの出来事についてはまた別に書き留めていくつもりなので、ここではこの4日間、私たちが何をしてきたのか、どんなことを考えていたのか、そして、どんな気持ちだったのか。
そういったことを書いておこうと思います。

12月9日、動物病院でシシが「FIPの可能性が高い」と告げられました。
しかし、この時の私はまだFIPのことを知りませんでした。
そこで、まず最初に行ったのが情報収集です。
もちろん、FIPについては獣医さんからおおよその説明は伺っていましたが、なんとなく耳には入っていたものの反対の耳から出てしまった部分が多かったのです。
覚えていたのは「FIPという病気」「治療費が高い」「手術は必要ない」くらいです。
ですから、FIPという病気がどういうもので、どういう治療を行って、予後はどうなのか、最低限この程度は知らなくてはいけないと思いネットで情報を集め始めました。
そして、程なくして「ほぼ100%助からない難病」であることがわかったのです。
しかし、それは少し前までの話で、近年は特効薬ができて「治せる病気」になってきているという情報もすぐに見つかりました。
「シシは治って元気になれるんだ!」
ホッとしてシシが元気だった時の姿が思い出されました。

元気でヤンチャだった時のシシ

しかし、そう思ったのも束の間、大きな問題が立ち塞がりました。
そう、治療にかかる費用です。
その額、お薬だけでおよそ90万円。
検査やその他の治療に必要になる費用を加えると100万円は軽く超えてきます。
これは完全に想定外でした。

ヘソクリのイメージ画像このようなことがわかってから、次に行ったのが現状を整理することです。
なぜなら、ここまでの費用となると私たちの生活にも少なくない影響があるからです。
シシを元気にしてあげたいのはもちろんですが、それでシシを飼い続けられなくなってしまっては元も子もありません。
そのため、無理にならない程度の努力で治療費が賄えそうか調べる必要があったのです。
要は金作ですね。
今すぐに動かしても問題ない余剰金がいくらあるのか、すぐには動かせないけど使っても平気な資産がいくらあるのか、これ以上は使えないボーダーラインはどの辺りなのか。
これを割り出して、現実的に治療が可能なのかを判断するための材料にします。
結果、すぐに動かして問題のない余剰金で治療費の半分程度を賄えることがわかりました。
メルカリのアイコン次いで、資産というにはあれですが、今は使っていないブランド品をメルカリなどで処分することで更に1割前後は補填できる試算となりました。
これで、およそ6割。
残りの4割は一先ず「老後の資金」として蓄えていた部分から出して、今後、収入や家計の無駄を削って少しずつ戻していくことにしました。

一度整理します。
まずシシはFIPのウェットタイプで胸水型です。
FIPは猫さんにとって必死の難病でしたが、今は特効薬があります。
しかし、それは未認可でとても高いお薬です。
治療を受けるにはざっくり100万円を超える費用が必要となります。
それを生活を壊すことなく捻出できるのは6割前後まで。
不足分は「老後の蓄え」から出し、今後のお仕事と家計の節約で少額ずつでも戻す。

ということで、とりあえず目先の費用は目途がたちました。
あとはシシの意思と闘病にかかる肉体的な負担です。
シシはこの4日間もまるで坂道を転がり落ちるように状態が悪化していました。
大袈裟かもしれませんが、本当に「死んでしまう!」と思う瞬間が何度もありました。
そのため、この状態で治療を始めたとして、改善するまで時間がかかるとその間ずっとツライ状態を耐えてもらわなくてはなりません。
ピンポイントでの対症療法も必要になり、その都度シシには頑張ってもらう必要があります。
その状況にシシは耐えられるのでしょうか?
というか、そもそも治療を始めたとして、状態が落ち着くまで生きていられるのでしょうか?
掛かりつけだった獣医さんからは「ツライと思うけど、楽にしてあげる選択ができるのも飼い主さんだけ」と言われていました。
知人から言われた「ペットのツラさを考えないで治療をするのは飼い主のエゴ」という考えも理解できます。
それに、FIPなら治療を選択しなくても「仕方がない」と思ってもらえます。
そう「仕方がない」のです。

病状が酷かった時の激やせシシ

いろいろ考えました。
しかし、考えれば考えるほど私は答えがわからなくなってしまいました。
シシの気持ちは私がシシじゃないからわかりません。
シシが耐えられるかもやってみないとわかりません。
誰のためにどうするのが正解なのか、そもそも正解があるのか。
本当にどうしたらいいのかわからなくて悩みました。
悩んで悩んで、結局のところ私にわかるのは「私自身の気持ち」だけだと気がつきました。
では、私はどうしたいのか?
私たちはどうしたいのか?
答えはもう決まっていました。

こうして、私たちはシシのFIP治療を決断したのです。
人間、開き直ると強いですね。

元気になったシシ

結果論ですし、2022年1月時点でまだ治療中ではありますが、シシは元気になっています。
ヤンチャが過ぎて困るくらいですが、それを見ていると「治療して良かった」と思います。

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